映画「空気人形」

   


先週の金曜日、レイトショーで是枝監督の映画「空気人形」を見てきました。是枝監督のファンで、前作の「歩いても、歩いても」も良かったので、とても楽しみにしていた作品でした。

独身の中年男性に大事にされていた「空気人形」(のぞみ)がある日、心を持って歩き出し、そして恋をするというお話。結構際どい?設定だったのですが、原作は業田良家さんの漫画だそうで、「自虐の詩」のラストで泣いた私は原作も気になるところです。(Amazonで買ったのでこれから読む予定。)

以下、感想。


クライマックスがきつすぎました。残念ながら、このクライマックスで気持ちがいっぱいいっぱいになってしまい、作品全体が捉えられなくなってしまった感が強いです。この作品に込められていただろうメッセージも、どこか私の中で飛散してしまって掴みきれませんでした。「生」と「性」とを、「空気人形」というオブジェクトを通して絶妙に表現する展開だったように思うのですが、辛さとか痛さとかが先にたってしまって繊細な思いはどこかへ行ってしまいました。残念…。

ただ、細かな一つ一つのものを拾っていくと、温かさや切なさがじんわり伝わってきます。

まず、画面が素朴でありながら個性的で、温かいです。秀雄の部屋、のぞみの服、秀雄とのぞみの深夜の公園デート、首に巻かれたマフラー、川沿いの新しさと古さが入り混じった町、陽の光、生きる者の息遣い・・・。

役者さんは、主役のペ・ドゥナがすごくキュートです。設定や画面が貢献するところも大きいですが、「生」を持った人形らしい、ささやかな表情の変化が素敵です。初めて外の人と接するときのぎこちなさや、隅田川の水上バスで「生」を堪能するシーンとか、本当にかわいくて仕方ありません。空気人形である体を、好きな純一に「見ないで」と消え入りそうに言うシーンは切なくて切なくて、でもかわいくて・・・。また、空気人形を愛する秀雄役の板尾がはまり役です。はまり役すぎてARATAが全然霞んでます(笑)。ペ・ドゥナと板尾を見るだけでも価値があるかも。余貴美子もベテランの風格があって良かったです。残念だったのはオダギリジョー。オダギリがダメというより、あの重要な役がなぜオダギリなのかが個人的にはしっくりきませんでした。

この映画のテーマは、全体としてとらえるのは難しかったのですが、ただ、誰もが悲しみや苦しみを抱いていて、それでも毎日を生きるその光景に、小さな幸せや、物悲しさを感じる、そしてそれが「生きる」こと。そんな作品でした。

たぶん、あのクライマックスを乗り越えられれば、好きな作品です。残念ながら今回は厳しかったので、機会があればまた見て考えたいです。

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