映画「父親たちの星条旗」
映画「父親たちの星条旗」を観ました。先日観た「硫黄島からの手紙」の兄弟作みたいなもので、硫黄島の戦いをアメリカ視点で描いた作品です。
この作品自体の感想より前に、硫黄島の戦いを日米両方の視点で同時に別の作品として作り上げたという姿勢に、私はまず圧倒されました。しかも、どちらが悪いといった描写や印象は無く、敬意を感じたくらいです。その意欲だけですごいなぁ、と思ってしまった作品でした。イーストウッド監督は偉大だわ。
「父親たちの星条旗」は、実話をもとに作られた作品だそうです。ピューリッツアー賞を受賞した「硫黄島に掲げられる星条旗(Raising the Flag on Iwo Jima)」という報道写真がアメリカで有名になり、その被写体となった生き残りの兵士が政治のプロパガンダに使われ、英雄と持ち上げられ、苦悩します。その生き残った3人の兵士のうち一人の兵士の息子が書いた本「父親の星条旗」が原作というわけです。
以下、多少ネタバレ含む感想です。
「硫黄島からの手紙」と違うのは、戦地よりも、帰国してからの兵士たちの描写が長い点です。もちろん厳しい戦いの模様も十分描かれるのですが、生き残った3人にとっては、戦地を回想しながら生きるその後の人生により重いドラマが待ち受けているのです。
そのせいなのか、「~手紙」の方が暗い、辛い、悲しいという印象だったのに比べて、こちらの作品はひたすら切ない…と感じました。仲間たちの死の記憶から癒えていないうちに、英雄と持ち上げられ、マスコミからも追われる日々。特に酒浸りになったアイラの生涯がなんとも悲しかったし、原作者の父親であるドクも、天寿をまっとうするも最後まで心に傷を抱えていたことが伝わってきます。
「~手紙」が家族を意識させるものであった一方、こちらは仲間を意識させられる作品でした。アメリカ的と言ってしまうとステレオタイプでしょうか。でも、最後の海のシーンに一番の想いが込められていたように感じます。どちらが好きということではなく、それぞれに思いが詰まった作品だなと思いました。ぜひ片方見るなら両方見ることをお勧めします。
ところで、帰国した兵士たちが使われるのは戦争国債募集のためのプロパガンダなのですが、財務省の偉い人が「お金が集まらなければ日本に負ける」というセリフを吐いてて驚きました。終戦間際とかもう日本がぼろぼろだと思ってましたが、アメリカも財政的に相当逼迫してたということをこの作品が描いています。