シンガポールのPR(永住権)は欲しいが、国籍は変えないという話

   

明日8月9日はナショナルデー、シンガポールの独立記念日です。国旗や赤いシャツを着た人があふれる街も、テーマソングを流したり特番を組んだりするメディアも、お祝いムードを盛り上げています。

ナショナルデー(独立記念日)に向けてスーパーで売り出したシンガポールの国旗

ナショナルデー(独立記念日)に向けてスーパーで売り出したシンガポールの国旗

さて、先日、コミュニティセンターの英語のコースで、下記の記事を読みました。

Singapore must manage inflow of new immigrants carefully: PM Lee Hsien Loong
http://www.straitstimes.com/singapore/spore-must-manage-inflow-of-new-immigrants-carefully-pm

もともとシンガポールは移民国家ですが、労働人口の減少を補うために積極的に優秀な外国人を受け入れ、そして条件に合った人たちにPR(永住権)を与えたり、シンガポール国籍への変更を進め、人口の維持・増加を図っています。

そのようなシンガポールの制度を利用し、働きに来ている外国人には、それぞれの目的や思いがあるでしょう。授業では、3人のグループで自分たちのことを伝えあいました。

それぞれのシンガポールに来た理由と将来の予定

日本出身の私

子どもがいない中年夫婦の妻。シンガポール在住歴は2年弱。夫の仕事の都合で来たので、本人自身にシンガポールで働く理由はない。夫は現職でシンガポールへの転籍話があったので来たという経緯。シンガポールに来てから、世帯収入はもろもろの理由で減ってしまった。なのでお金目的でシンガポールに働きに来たというつもりはないし、実際そのようになっていない。
駐在ではないので、このまま当地に留まれば、いずれPR(永住権)の申請も可能かもしれないが、夫婦ともにシンガポールに長く居たいという希望はないので、PRは望まないし、近い将来本帰国したいと考えている。

中国出身のGさん

2児のお父さんで、シンガポール在住歴は15年以上。母国で結婚し、一人目のお子さんをすでにもうけていたが、十数年前は中国よりシンガポールの方が収入がよかったとのことで、単身シンガポールに働きに来る。数年後、奥さんとお子さんを呼び寄せ、シンガポールでさらに二人目のお子さんをもうける。PR保持者ではないらしく、息子さんに兵役の義務はなさそう。(シンガポール国民、PRの男子には兵役の義務があります。)
中国の労働市場は以前よりずっとよくなっており、お金がたまったら家族で本帰国も考えているとのこと。ただ、息子さんがシンガポールの学校への進学を望むのなら、この国にいてもいいとのこと。

マレーシア出身のAさん

中華系マレーシア人の1児のお母さん。シンガポール在住歴は数年。同じくマレーシア人のご主人がシンガポールで働くことを決めたので、それについてきたとのこと。ご主人がシンガポールで働くことにしたのはシンガポールの方が収入が良いから。ビザの都合で幼いお子さんは連れてこられず、実家に預けている。普段は夫婦二人でシンガポールで働き、月に一回だけマレーシアに子どもに会いに帰っている。
収入面だけでなく、子どもの教育の面でもシンガポールがいいと考えていて、PRを取得して息子をシンガポールに呼び寄せるのが今後の目標。

GさんとAさんがシンガポールに来た理由

GさんもAさんも、シンガポールで働く理由は収入が理由でした。つまり、出稼ぎに来ているということになります。ただ、どちらもお子さんの教育のことにも触れており、子どもを育てる環境としてもシンガポールに魅力を感じているようです。

結構ショックだったのが、Aさんがお子さんをマレーシアに置いてきていること。まだ1歳か2歳くらいだったと思います。以前、中国の農村では子供を親に預けて若い夫婦だけで都会に出稼ぎに行くのが普通、なんていうのをTVで見ましたが、マレー半島でもそういうことがリアルで起きていることを身近な例で知りました。彼女が早く子どもを呼び寄せられるようになることを願うばかりです。

一方、数字が無いので印象の話になりますが、日本人で収入目的、子どもの教育目的でシンガポールに来ている人たちの絶対数は決して多くないと思います。そもそも駐在が多いし、現地採用でも日本人が日本よりシンガポールで稼げる職種はそうないと思うからです。教育目的の移住話はネット上で見ることはありますが、実生活でそう言ったご家庭に会ったことはありません。

日本との違いを感じた事例でした。

リサの同僚の方の話

話は少し変わって、夫リサの同僚の話。

ランチの場で会社の同僚とPRの話になったそうです。シンガポールの歴史的背景から、中華系マレーシア人はPRが取得しやすいと言われているのですが、リサの同僚の中華系マレーシア人の皆さんはやはりPR所持者だそうです。そしてそれ以外の国籍の同僚たちもPRを申請中、もしくは近いうちに申請予定とのことでした。つまり、リサ以外の外国人はPR所持もしくは取得を希望しています。

かなりの衝撃を受けたのが韓国人の同僚の方の話。

前述の通り、シンガポールでは男の子のお子さんがいる方がPRを取得すると、息子さんに兵役の義務が発生します。日本人のご家庭だと、お子さんを他国の兵役に送ることに迷いが出ることもあるでしょう。

しかし、その韓国の同僚は、
「韓国でも兵役はあるし、むしろシンガポールの方が楽」
という理由で躊躇が無いそうです。

そうでした。韓国には兵役があるのでした。
そして「シンガポールの方が楽」というニュアンスは正確にはわかりませんが、少なくとも
有事が差し迫っている可能性は、朝鮮半島の方が高い
というのは事実かと思います。

お金のこととか、教育のことだけでシンガポールの外国人のことを捉えていた私は平和ボケしているのかもしれません……。朝鮮半島問題は、日本も他人事どころか当事者に近い問題なのに……。

PRを取得しても国籍は変えない

Gさん、Aさんと話をしていて意外だったことがあります。いずれ中国に帰ると言っているGさんはもちろん、PR取得を希望しているAさんも、自国の国籍は手放さない(=シンガポール国籍にはならない)と言っていました。さらにさらに、あるシンガポール人の方までが、「なぜ(外国人で)シンガポール国籍に変える人がいるのか理解できない」と言ってました。

ダイソーにもシンガポール国旗グッズがたくさん

ダイソーにもシンガポール国旗グッズがたくさん

私は、国籍を変えたがらないのは日本人ばかりだと思っていました。20年以上こちらに住んでいるシンガポール人と結婚した日本人の方に会ったことがありますが、国籍は変えないと言っていました。しかし、日本人の限らず、「PRは欲しいが国籍は変えたくない」という人は多いようです。

安全で急速な発展を遂げたシンガポールは、働く国としても子どもを育てる国としても、魅力がある国だと思います。その魅力に外国人が集まり、長くこの地で生活するためにもPR取得を望む人たちが多くいます。そして冒頭に書いたように、シンガポール政府は優秀な外国人には国民になって欲しいと考えています。

当たり前ですが、国籍を変える人・変えない人、それぞれの事情や考えは、もっといろんな人に話を聞かないとわかりませんし、実際に多種多様だと思われます。なので、あいまいな印象しか書けませんが、「国籍を変えてもらう」というハードルは、結構高いのでは、と思うようになりました。

明日52歳を迎える、移民国家のシンガポール。今後どのような人たちがこの国の一部になっていき、どのような発展を遂げていくのかは、いずれ日本に帰る日本人の立場からも、気になることです。

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