本「ノルウェイの森」
村上春樹の新作「1Q84」が話題になってますが、振り返ると村上春樹の本を一冊も読んだこと無かったことに気づき、代表作「ノルウェイの森」を一気に読みました。
なんの予備知識も無く読んだら「こんな話だったのか」とびっくりしてしまったのですが(笑)、賛否両論分かれる中で、私は真ん中よりちょっと好き、といった感じです。
以下、ネタばれも含む感想。
まず、この小説は何だろう、と聞かれたら、純粋な恋愛小説だろうと思いました。性描写についてやたら注目するようなレビューをあちこちで見ましたが、私の感覚だとこの作品の描写は淡白で、それに気を取られると作品がなんだかわからなくなると思いました。
むしろ冷静に性に関するやり取りを見ていると、キズキと直子、ワタナベと直子、それぞれの関係における直子の思いと体の反応がとても繊細で、それがわかるようなわからないような不思議な気持ちになりました。プラトニックとか、そういうことじゃなくて、もっと心と体が強く結びついた感じ。キズキと直子は結局、性愛を超えた関係だったのかな。
私は女なので、この小説をどうしても女性の立場から見てしまうのですが、ワタナベは魅力的な男性だと思いました。言葉の切り返しがいちいちスマート。気取らず自然で、それでいて相手の気持ちに沿う優しさがあるというか。いたずらに女の子と遊んでいるようなシーンが多かったですが、それは相手も了承済みの消費としての遊びで、積極的でもないし。何よりも直子への愛情の深さが素敵で、一緒に住もうという話が出たとき、きゅっと心の奥が掴まれたような感じがしました。手紙を書くシーンにも心惹かれました。
緑は、死の影を背負った直子と対極的に描かれたキャラクターであり、ワタナベに生の光を与える存在だったのだと思います。彼女の登場シーンはやたら熱くて生の世界のリアリティを感じました。彼女がいなかったらワタナベも立ち直れなかったと思いますが、最後の最後で本当に愛しているのが直子なのか緑なのかわからなくなったのは少し残念。(直子だと思うんだけどなぁ。)
まぁ、そんなこんなで、激しくも無いけれど、どこか心の端っこを掴まれる様な作品でした。単純に、ワタナベの直子に対するような愛され方をされたら嬉しいだろうなぁ・・・と言う女としての幸せを妄想したり、私はそんな読み方もしていたのでした(笑)。
映画化が決まって、来年公開だそうです。ワタナベ役に松山ケンイチは合ってると思うので楽しみです。