本帰国前に行っておこう:シンガポールの公団(HDB)のモデルルームは興味深い
シンガポール在住中に行っておいてよかったと思ったり、本帰国前に駆け込みで行った場所についてご紹介したいと思います。
第二弾は、シンガポールの公団(以下、HDB)のモデルルームです。
Contents
シンガポールの住宅事情
シンガポール在住の日本人の多くはコンドミニアム(高価格帯のマンション)に賃貸に住んでいますが、シンガポール国民の約8割は購入したHDBに住んでいます(→HDB > Annual Report > Key Statistics 2016/2017)。つまり、多くのシンガポール人のとっての「家」とは、この「HDB」なのです。
そもそもHDBが何かというと、「Housing & Development Board」の略で、Wikiでは「住宅開発庁」と訳されているシンガポールの法定機関です。その名の通りシンガポールの住宅を開発しており、そこが開発・供給する住宅(日本人が呼ぶところの「公団」)もHDBと呼ばれています。
多くのHDBは高層で密集して建っており、コンクリートをペンキで塗ったような外壁です。日本の団地に比べると、建物によっては個性的な色に塗られていたり、1階に商店街やコーヒーショップと呼ばれる食事処が整備されているのが特徴的です。遊具や運動器具が設置されていたり、集会所のような広場が併設されていて、冠婚葬祭をそこで行います。また、民族構成が偏らないように住民の民族割合が調整されています。
トアパヨにあるHDBとHDBギャラリー
そんなHDB(公団)を開発しているHDB(住宅開発庁)ですが、トアパヨにあります。トアパヨはオーチャードから3つ目の駅ですから、そこそこ中心に近くてアクセスがいいです。さらに建物がトアパヨ駅から直結しているので、出口案内を辿れば迷うことなく行ける場所です。
ここはHDBフラット(公団の部屋)の購入を検討したり、何か手続きが限り行くことがない場所なので、多くの在星日本人には縁のない場所です。しかしある週末、夫リサが「観光客が行かないようなユニークな場所に行きたい」とネットで探し出したのが、「HDBギャラリー」だったのでした。
HDBギャラリーはHDBの歴史から、現在のHDBについてを学べる場所です。冒頭の昔のHDBを再現した展示などは、日本の昔の家とも似た雰囲気があり、ノスタルジックな雰囲気が良かったです。ただ、それ以外の展示は……正直あまり興味が持てないものでした。写真や映像など、見せる工夫はあるのですが、全体的に説明的な展示が多かったです。よっぽどシンガポールの住宅政策に興味がないと面白くない気がしました。退屈で、全体をざっとみてすぐに出てしまいました。
なお、このHDBギャラリー、2017年9月末から来年にかけてリノベーション中で閉鎖されているようです。再開後に面白くなればいいですが。。
HDBのモデルルーム「My Nice Home Gallery」でシンガポール人生活をのぞき見
トアパヨまで来たのに、HDBギャラリーは面白くなかった……とリサと二人、肩を落としていたところ、リサが案内板に「HDB Showflats」という文字を見つけました。これってモデルルームのこと? と二人で顔を見合わせましたが、確信は持てず。しかしこのままなんら楽しい思いもなくトアパヨを後にするのがもったいなかったので、案内板の方向に向かってみました。
そして、渡り廊下を歩いてたどり着いたのが「My Nice Home Gallery」。
「My Nice Home Gallery」
http://esales.hdb.gov.sg/hdbvsf/eamnhindex.nsf/html/index.html
まさにモデルルームでした。広いフロアに2部屋のタイプが2つ、3部屋、4部屋、5部屋のタイプが各1つずつ、再現されていました。
間取りが再現されているのはもちろんですが、インテリアをお洒落に整えたり、窓の外に眺めのいい写真を配置してみたりと、気分が上がる工夫がされていました。私は日本のモデルルームを知らないので、それとの比較はできないのですが、そこでの楽しい生活を十分イメージできるように作られていたと思います。
週末(土曜日に訪問。日曜日は閉まっているようです)とあってか、家族連れでかなり賑わっていました。3部屋以上のタイプは子供部屋が用意されており、そこで子どもたちがはしゃいでいるし、5部屋タイプになると3世帯同居をイメージしているので、おじいちゃん・おばあちゃんが興味津々のようでした。(ちなみに、不動産が高いシンガポールで3世帯同居はかなり一般的です。)
私たちにとっては、新しいHDBの部屋であるという点が興味深かったです。私たちは来星当時、HDBの賃貸も検討しています。しかし予算の関係でだいぶ古い部屋ばかりを見ており、正直HDBのイメージはよくありませんでした。それが、ここは最新の部屋の展示なので、設備は新しくてきれいだし、雰囲気も明るく、古いコンドミニアムよりむしろいいのです。まぁ、実際借りるとなると新しめのHDBはコンドミニアムに負けないくらい高いのだろうと思われるし、確か築5年以上経たないと賃貸には出せないのですが……。
また、HDBの室内の特徴を改めて知ることができます。日本と大きく異なるのは、バス・トイレが基本一緒であること。ベランダがなく、洗濯物は窓から竿を出して干すこと。ボム・シェルターがあることです。物件によって違うようですが、基本仕様は大体同じようです。
実際に住むことをイメージしたとき、厳しいと感じるのはバス・トイレでしょうか。シンガポール人はシャワーで済ませることが多く、基本的に浴槽は必要ないそうです。(あとから設置工事はできるようです。)モデルルームでびっくりしたのが便器のすぐ横や正面にシャワーがあったことで、シャワー浴びたらトイレがびしょびしょになる、とリサと話してました。後でシンガポール人に聞いたところ、普通は仕切りがあるそうです。
あと、窓から竿を突き出して洗濯物を干すのも、怖いのでやりたくないです。ベランダがないなら部屋に干すしかないかな。
→「とうとうHDBの物干し竿落下現場に遭遇。危ないです、本当に。」
※(2018年10月追記)momoさんよりコメントいただきました。竿を突き出すのは古いHDBで、最近は室内の天井近くに物干しを設置している人が多かったり、自動で物干しが降りてくるシステムを導入しているHDBもあるそうです。
ボム・シェルターは……今までこのブログに詳しく書いたことがありませんが、シンガポールには敵の攻撃から身を守るためのシェルターが普通のマンションに存在します。窓はなく、分厚い鉄の扉で守られ、通信回線かなにかが引かれてると聞きます。私たちが住んでいた部屋にはなかったので、詳しい仕様や、どのようなルールで設置されているのかは知らないのですが、小国がゆえの危機対策で、HDBにも存在するようです。これ、あってもいいんですが、これで面積取られるのがもったいない気がします。多くの家庭で物置になっているらしいですけどね。
そんなわけで、このHDBモデルルーム「My Nice Home Gallery」は、シンガポールの生活スタイルを楽しく、かつ興味深くのぞき見できる場所でした。
モデルルームは面白いし、興味深かった
HDBギャラリーは今一つでしたが、モデルルームは堪能してきました。最後はモデルルームと合成写真が撮れる写真まで撮ってきました。
実際にHDB購入を検討しているご家庭に、楽しいイメージを残せる場所だったと思います。
本来はHDB購入者向けの場所なので、外国人が冷やかしで行くべき場所ではないと思います。ただ、シンガポールの人たちの「家」を見て、その生活を垣間見ることができる興味深い場所だったので、そのような観点でシンガポールを知りたいと思っている方たちにはお勧めの場所です。