本「サラミスの兵士たち」(Soldados de Salamina)

   

本「サラミスの兵士たち」を読みました。2001年に刊行されてスペインで大ブレイクした小説だそうです。映画化されてカンヌにも出たみたい。本の日本語版が出たのは2008年で、映画は残念ながら日本未公開。

スペイン内戦のことをネットで調べていて出会った本なのですが、何の気なしに読んでみたら面白くてすっかりはまりました。終盤は切ない気持ちで胸がいっぱいになり、はらはらと涙を流しながら読みました。

主人公は作家くずれの物書きで、新聞社の仕事の取材で出会った小説家サンチェス・フェルロシオから、その父サンチェス・マサスのスペイン内戦末期の銃殺未遂事件の話を耳にする。それをきっかけに、主人公がこの銃殺未遂事件にまつわる人々と、その人々の数奇な人生を追っていくお話です。



物語は三部構成で、第一部は作者のクリェイの銃殺事件のエピソードとの出会いからその事件の姿を追うまでのお話。第二部はその取材をもとに書き上げたサンチェス・マサスを主人公にする「サラミスの兵士たち」という記事の本編。そして第三部は、「サラミスの兵士たち」に何かが足りない、と感じた主人公がさらにその先を追い求め、スペイン内戦の時代にあった人々の人生の姿を描いています。

第一部は、史実に対する知識不足と、登場人物の多さとカタカナの名前が追い切れなくていろいろ混乱したのですが、第一部の終わりから第二部にかけて、謎解き的な要素もでてきてかなり面白くなってきます。そして、第二部で終わったかに思えた話が、第三部で厚みを増し、静かな悲しみと感動で終わるという感じ。ちなみに全部読み終わった後にもう一度第一部を読み直して、人物整理したりしました。

私はこの話が、フィクションなのかノンフィクションなのか最後までわからないまま読みました。実在の人物も出てくるし、史実にも忠実な内容のようでした。なのでフィクションにしてはとてもリアルだし、ノンフィクションにしては話がうまく進みすぎるところもあって、非常にその辺は気持ち悪い感じがしました。訳者の方の後書きのニュアンスからするとやはり事実をベースにしつつも完全なノンフィクションではないようですが…。(ちなみにサンチェス・マサスは旧ファランヘ党の主要人物。また、後半に実在のチリ人作家も登場します。)

この本をどう楽しむかはそれぞれだと思いますが、私としては今まで読みかじったスペイン内戦関連の本や記事では一番読みやすいものだったし、左派と右派のどちらがどう、という私見が加わっていない、ただ、戦争は戦争だということの悲しみがじんわりと伝わってくるのがよかったです。

詳しくは書きませんが、抱擁のシーンがぐっときました。あと、サンチェス・マサスがその人生で助けられたり助けたりしているのですが、そこに「人間として憎みあっていない同士がもともと戦う必要なんてあるのか。戦争ってなんだ」みたいな憤りを感じます。スペイン内戦とはなにかが、こう、変に色んなものがねじれてしまった悲劇なのでしょうか…。

ネットで映画がよかったと言ってる人がいたなぁ。私もYouTubeでトレーラー見ただけで泣いてしまった。ぜひ全編見たいです。

もちろん本書はお勧めでございます。

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