本「闇の子供たち」
梁石日の「闇の子供たち」を読みました。朝読み始めたら止まず、帰宅後に一気に最後まで読んでしまいました。
タイで貧しい子供たちが売られ、売春や臓器売買の対象となり、人間として扱われずに人生を終える凄まじい模様が描かれています。そんな子供たちの凄惨な人生と、一方で子供たちを救い、そんな世界を変えたいと願うNPO団体の人たちの戦いを描いた作品です。
前半はあまりにも残酷な話ばかりで、活字なのにまともに目も向けられず、想像力セーブさせながら読まざるを得ませんでした。後半は、正義感をもった人たちが闇の世界と戦う展開で、辛いながらもかすかな希望を持って読むことができます。しかし、リアリティをもった社会派フィクションなので、当然勧善懲悪な話ではありません・・・。
この本自体はフィクションだそうですが、描かれていることすべてがフィクションではないと思います。登場する日本人・音羽恵子の心の動きに共感し、そして辛い気持ちになる日本人は少なくないと思います。世界は無関心だという絶望感。言われて、心を痛めて、そして日常に戻る。そんなことを何度も繰り返してきました。
私はこの本を読んで、明日何かをするわけではありません。でも、ずっと心のどこかにしまっていて、何か、些細なことでも事を起こせる立場にあったら、そのときに何かを選択するきっかけにはなると思います。
物事や人の心の複雑さも、この作品は描ききっていると思います。