本「ぼくのメジャースプーン」
辻村深月さんの「ぼくのメジャースプーン」という本を読みました。
不思議な力をもった「ぼく」が、大好きな友達のふみちゃんを巻き込んだ事件の犯人に対し、その力を使って復讐を試みる、というお話。
筋書きだけ書くとなんだかシンプルに見えるのですが、この少年が生まれながらに持った不思議な力というものが結構複雑な力でして、念力とか透視とかそんなわかりやすいものではなく、人の心に働きかける力なのです。その力のトレーニングでだいぶページが割かれている点からも、そのややこしさが伝わってきます。その力の姿の追究こそが、主人公が自分の考えを読み解くこのお話のキーなのかもしれません。
ただ、その話の過程が理屈っぽいところが少々あり、なのに主人公が小学校4年生という設定なのがしっくりこなくて、面白いと思いつつも少し疲れてしまいました。
なぜ作者は、これだけロジカルな部分が大事なお話の主人公を小学生にしたか不思議です。私の印象だと、主人公もふみちゃんも十分大人びていて、中学生くらいの設定にしないと逆に違和感がありました。私が最近の小学生を見くびっているのでしょうか(笑)。大人だって混乱しそうな物の考え方や言葉の組み立てを抵抗なくやっている主人公が、それだけで現実味のない印象を受けてしまいました。
クライマックスはなかなか面白かったです。映像が頭に浮かぶようで、映画に向いてるかもと思いました。また、全体を通して扱っているテーマが、重いです。それについて自分でも考えながら読み進めれば、ただお話を楽しめるだけでなく、得られるものもあるかもしれません。