映画「コクリコ坂から」

   

ジブリの映画「コクリコ坂から」を見てきました。

評判がいいとは聞いてましたが、7月中旬に始まってここまでしぶとく上映がつづいているということは悪くないのかもという期待がありました。そして私の率直な感想は、「もやもやするけどいい感じかも」。

もやもやの正体は、この作品の特徴を書き出すとわかります。

・とってもノスタルジー
・ザ・青春(ただし1960年代)
・ほのかな恋心
・家族や人生についての深い思い



時代設定が東京オリンピックを控えた1960年代で、まだ少し戦争の影を残した空気感があります。主人公が17歳くらいなので、今の60代の人たちにとって「懐かしい」と感じる絵なのではないかと思いました。

私の親がまさにその世代ですが、この映画を観に行くかといえば、アニメなので観に行かないでしょう。いや、好きな人は60代でも見ると思いますが、積極的に選ばれるとはとても思えません。

そういう意味で誰をターゲットにしているのかが良くわかりません。少なくとも子供ではないです。でもって30代の私も、どこか主人公たちに思いを入れようとしても、時代が違いすぎて入り込めない違和感があるのです。つまりこの作品には、「ノスタルジー」+「ジブリ」という部分のブレンドがうまくいってないように感じたのです。

絵はきれいだし、キャラクターも現実味がある強すぎない個性がストーリーに合ってるし、作品としては悪くないなぁと楽しみながら鑑賞しつつも、前半はそんなもやもやがずっと晴れない感じで観てました。

面白くなってきたのは後半、学校の建物解体についての反対運動が盛り上がってきたくらいからです。その運動の盛り上がりとともに主人公の人生の裏にあるものの深みも出てきて、時代とか、そいうものが少しどうでもよくなってきて、気持ちが入るようになりました。

そして静かなクライマックスには泣いちゃいました。

年を取ったせいか、ファンタジー作品の大騒ぎの後の大団円より、静かに味わうような終わり方が好きです。あのおじさんの「二人に会えてよかった」という言葉は、戦争の残した暗い影もあいまって、深かったなぁ。

そんなわけで終わってみると、前半はもやもやしたけど良かったなぁ、というわけです。

この作品は宮崎吾朗が監督ということですが、父親の関わりも小さくなかったみたいですし、まだ宮崎吾朗がジブリの後継という感じでもないのでしょう。でも「ゲド戦記」よりはずっとよかったし、監督を続けるためのステップ作品としては成功だったんじゃないかと思います。

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