映画「私を離さないで」

   

映画「私を離さないで」を観てきました。最近、カズオ・イシグロさんが気になってるのですが、たまたま作品が映画化されたので観てきたという感じです。作品の主人公たちは10~20代なのですが、観客に中高年夫婦が多かったのは原作のファン層なのでしょうか?

映画のネットでの評判は賛否両論。ほめる人とけなす人、両極な印象を受けました。そして私が観た感想は…イマイチといったところでしょうか…。むむむ。そもそも、この作品の根幹になる大胆な設定を、観客が受け入れられるか否かがこの作品の評価を大きく決める気がします。そして私は「ノー」だったわけです。

以下、もろネタバレを含む感想です。



この話は、生まれながらにして将来、臓器提供者(ドナー)となることが決められた子供たちが、特殊な環境で成長し、恋をして、やがて臓器提供を命じられて終了(死)を迎えるという話です。まぁ、普通に見ると倫理的にありえない設定なので、少しファンタジーというかミステリー的な雰囲気がある作品です。

私がこの設定が受け入れられないと感じたのは、倫理的にありえない、という気持ちを覆いかえすだけの説明や主張がなかったからだと思います。(一言だけ学校の校長から語られるだけ。)さらに、時代設定が80年代、90年代と、近現代に設定されていたため、ますますありえないと思ってしまいました。そうなると終始しらけた気分になってしまうものです。

似たような残酷さを帯びた作品で思い出したのが森博嗣さんの「スカイ・クロラ」です。しかしあの作品は時代も場所も「今ではないいつか。ここではないどこか。」というあいまいさを含んでいたので、適度にその世界観を受け入れることができたのだと思います。

臓器提供の話を除けば、物語は男女の三角関係のお話。まぁ、面白いし、役者さんも嫌いじゃないのですが、やっぱりそこだけ見ると作品全体が薄っぺらく見えてしまいます。結局は臓器提供の話…魂や命の話…がメインであり、その運命を背負った男女の恋と生死の話なんだと思います。

どうやら原作はとても評価が高くて人気があるようなので、映画を先に観たのは失敗だったかもしれません。機会があれば原作も読みたいと思います。

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