Digital Graphic Diary




『KUROSAWA Returns! 「用心棒」/アッバス・キアロスタミ「TEN」』

 >>>   -- 03/07/29-02:54..No.[129]  
    またまた行ってまいりました。KUROSAWA Returns!

今回観た作品は「用心棒」です。で、もう一本は黒澤じゃなくてアッバス・キアロスタミの「TEN」。この組み合わせには何の意図もないと思いますが、どちらも興味がある作品だったので一緒に見れてよかった。(・・・前回説明しましたが、この映画館は一日二本上映で、一本だけだと7.50ドル、二本観ても8.50ドルなので、二本観るとお得なのです。)

先に全体の感想をぶっちゃけ言ってしまうと、後に観た「TEN」がすごく良くて、先に観た「用心棒」についての感想がどこかへ消えてしまいました(笑)。そんなバカな、と言われそうですが、「TEN」は本当に素晴らしい作品だったのです。英語キャプションについていけず、すべてを理解したわけではないのですが、それでも鑑賞後はしばらく映画の世界にはまって抜けられず、理解できて素晴らしいと感じた言葉を頭の中でひたすら反芻させていた、という感じでした。

で、ちょっと言い訳をまえにおいたところで「用心棒」の個人的感想を。基本的に理屈ぬきで人がバタバタと殺される映画は苦手なので、思わず目をそむけたり気分が悪くなるシーンなんかもあったのですが、キャラクターが誰も彼もが個性的なのはとても面白かったです。シリアスな展開でもちょこちょこっとテンポよく笑いが入るし。仲代達也が若かった。ちなみにラスト「終」という文字が出た後に、よほどそのラストが痛快だったらしく、観客席から拍手が巻き起こりました。びっくりしたぁ。

そしてイランの巨匠、アッバス・キアロスタミの「TEN」。アッバス・キアロスタミは「友だちのうちはどこ?」「風が吹くまま」「桜桃の味」の3本はすでに日本で観ていて、中でも「桜桃の味」はすごく好きだったのでバンクーバーで最新作を観られると知ったときはちょっと嬉しい驚きでした。

ストーリーは、バツイチで再婚した子持ちの女性と、彼女の子供、姉、その他の人たちとの車の中での10つ会話。なんとカメラは運転席、助手席それぞれに設置されたたった2台で、話のすべてはその2つのレンズの向こうで進むのです。カメラは固定なのでアングルが変わるなんてこともありません。最初その話を聞いたとき、すごく退屈な映画なんじゃないかと心配したのですが、役者がみんなみんな素晴らしく、彼らの豊かな表情や言葉は一時も私たちを飽きさせませんでした。

この映画は台本があったとか、ないとか色々言われているのですが、10話のストーリーはどれもこれも小さな人生の真実を言い当てるような言葉にあふれていました。人は誰かのものではなくて、人は世界のものである・・・とか、人生はwin lose win loseの繰り返しである・・・とか。スクリーンの向こうから痛いくらいに役者の気持ちが伝わってくることもあって、この人たち本当に演技?と疑いたくなることもしばしばでした。特に主人公の息子、アミンの演技はamazingです。

悔しかったのが、英語のキャプションをところどころ理解できなかったこと。文章自体はシンプルなのですが、イディオムとか特別な言い回しがあって、しばしば笑いのタイミングを逃しました。周りが大笑いしているのに自分は頭を抱えてる姿はむなしいものです。人生でこんなに「イラン語がわかったらなぁ!」・・・と思ったことはない瞬間でした。

「TEN」ですが、日本では8/2から渋谷で公開されます。お時間がある方、ぜひ足を運んでください。


※写真は・・・本文と全然関係ないんですが、学校のコンピューターの逆さについた矢印キー。発見した瞬間みんなで笑った・・・。





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